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ドゥニア・ブザール「家族をテロリストにしないために」白水社

副題は「イスラム系セクト感化防止センターの証言」とある。多くの若者がISなどのイスラム過激派組織に感化され、テロリストに身を投じいった。彼らを救い出すために2014年に「イスラム系セクト感化防止センター(CPDSI)」は創設され、少しずつ成功している。彼らがなぜ過激思想に染まっていくのか?その現状と過程を赤裸々に綴っている。ISやアル・ヌスラ戦線は自分の都合の良い解釈でジハーディストという言葉を使っている。引き込み方はビジュアル中心だ。刺激的でエンターテインメント的な要素の強い画像、正義感を煽り、美しい音楽と詩などを散りばめて、陶酔させる。「真の正義を成しとげる戦士」「世界の幸福のために立ちあがらなければ!」といった意識を植えつける。まさに洗脳というやつだ。そこには陰謀説が多く使用される。一度染まったら映画やテレビは見なくなる。「穢れから身を守れ」と洗脳されるからだ。そうすることで世間から遮断され、孤立は深まり、ますます熱心な偽ジハーディストとなっていく。偽ジハーディストは指導者のために人間性をすて、自分を犠牲にして大儀を果たすことで愛されていると感じるようになる。実に恐ろしいことだ。でも紙一重の若者は世界にたくさんいるであろうことは容易に予測できる。こういった思想に染まったわが子を救おうと必死になっている親たちがたくさんいる。この断絶をうめる唯一の手段が「思い出の共有」「絆の確認」であるらしい。そのために思い出の場所にもいってみる・・。そうして実際に戻ってきた若者が出てきている。100人を救ったらしい。しかし、戻ってきても「自戒と孤独」に襲われる日々が続き、もとに戻れる若者は実際いないらしい。悲しいことだ・・。社会に格差と差別が存在する限り、この危険性は常にある。安心はできない。日本からもそういう人は実際に出ている。第2第3の偽ジハーディストがでることのないように、多文化を包括できる社会がはやく実現しないといけない。俺もその一翼を担う存在だと思っている。しっかり記憶に留めておこう。


by oritaraakan | 2018-01-07 00:49 | 徒然日記  

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