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伊藤千尋「観光コースでないベトナム」高文研

この本で再確認できたことは、ケネディ、ジョンソンらアメリカ大統領の負の遺産だ。ドミノ理論を背景に南ベトナムを足場に途轍もない戦争を起こした。北爆の口実もイラク戦争と同じく捏造だったとは知らなかった。ベトナム戦争でアメリカは第二次世界大戦で使われたすべての爆弾の4倍にあたる800万トンの爆弾を使った。今回俺はハノイで軍事歴史博物館を見たが、ベトナムの執念を感じる記念物が沢山展示されていた。この戦争には韓国政府も31万人の兵力を送り、現地の人には恐ろしい印象を植え付けたようだ。日本も無関係ではない。米第7艦隊は横須賀からベトナムに向かい、B52は沖縄嘉手納基地から北爆に飛び立った。後方支援を当時の佐藤首相が惜しみなく行っていたのだ。この戦争は「朝鮮特需」に続く「ベトナム特需」として日本経済に潤いを与えた。日本の繁栄の背景に韓国朝鮮とベトナムで多くの犠牲があったことを忘れてはなるまい。それだけではない。1944年末から1945年初頭にかけて続いた飢饉の最中、日本軍はベトナムの農村からコメを収奪、多くの農民を飢え死にさせている。まあ、戦時中の爪痕はアジア全体に及んでいるということだ。本著でもう一つわかったことがある。インドシナ半島内の構造だ。ベトナム南部はもともとクメール人(カンボジア人)が支配していた。カンボジアにとって昔脅威だったのはタイであったらしい。そのタイを倒すためにベトナムと組んだことが誤りで逆にベトナムにサイゴン周辺を奪われることになった。つまりカンボジアにとってはベトナムが侵略者であるわけだ。こういった歴史的な背景をしった上での今回のベトナム訪問は意義深かった。
<メモ>
アオザイのアオは上着、ザイは長いという意味

by oritaraakan | 2012-11-28 22:58 | 読書ログ  

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