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吉本隆明・清水徹他「書物の現在」白馬書房

1989年、当時の思想界を兼任した哲学者達の講演をまとめた一冊である。書の歴史から書の捉え方まで幅広く紹介してある。本来言葉とはintuition(直観)に訴えるもの=観られるもの(idea)として存在するものである。事実、ソクラテスは一冊の書も書かずして多くの者を感化できた。しかし、プラトン以下多くの碩学達がこれを書にしたことで、ソクラテス哲学の一部は共有できるようになった。書は当初、権力の象徴として君臨したが、グーテンベルグの活版印刷と聖書のドイツ語翻訳によって、権力から引きはがされ、民衆の知の道具として活用された。書物とは記憶と思考力と想像力を拡大、延長するための道具なのだ。現代、言葉は音声・映像によって拡大・延長されている。書物にかされた課題はこういった現実に対する挑戦ができているかということだ。提起されている課題は重い。

by oritaraakan | 2012-02-15 21:50 | 読書ログ  

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